物分りのいい彼氏と聞き分けのいい子ども

初めから期待をしなければ、失望もしなくて済むのだ。身の程を忘れて欲張ると、ろくなことはない。へたをしたら、せっかく手に入れたものまで根こそぎ失うことになるかもしれない。そう思うだけで気持ちがすくみ、俺はつい、夏姫さんの前で、<物分りのいい彼氏>を演じてしまうのだった。そう−−−ちょうど昔の俺が<聞き分けのいい子ども>だったのと同じように。
村山由佳天使の梯子

失うことを恐れると、自分が失いつつあるものに気づくことができない。そんな気がする。