記憶のいれもの

記憶のいれものというのはたぶん、古ぼけたオルゴール付きの小箱みたいな姿をしているんだろう。見た目は何の変哲もなくて、だからふだんはそんなものが自分の中にあることさえ忘れている。でも、何かの拍子に見聞きしたものが鍵となり、それがたまたま鍵穴にぴたりと合うと、おもむろに箱のふたがひらきネジがまかれて、思い出にたちまち色や音がついてあふれだす。
村山由佳天使の梯子