2005-08-23 記憶のいれもの 記憶のいれものというのはたぶん、古ぼけたオルゴール付きの小箱みたいな姿をしているんだろう。見た目は何の変哲もなくて、だからふだんはそんなものが自分の中にあることさえ忘れている。でも、何かの拍子に見聞きしたものが鍵となり、それがたまたま鍵穴にぴたりと合うと、おもむろに箱のふたがひらきネジがまかれて、思い出にたちまち色や音がついてあふれだす。 −村山由佳『天使の梯子』