ダメ人間と成熟と。

荻原魚雷『本と怠け者』という文庫本を読んでる。
この荻原魚雷という人の書く文章がなんだか好きだ。
別に名文でもなければ、風景描写が素敵だとか、
心象描写が優れてるとか、まったくもってそんなことない。
ただ、好きな本だけ読んで、何とか食っていけるだけでいい、
そんな何か諦めた感があるんだけど、でも、
捨ててはいない人生は、ってな感じのぬるくて緩くて、
ポワポワした生活感がいい。
ま、要するにダメ人間だw。
で、それがいいんだな。どこかで、ぼくもそんなダメ人間に、
憧れがあるのかもしれない。でも、どっかに書いてたけど、
その道はそれはそれで厳しい気がするぞw。

会社の女子がFacebookでシェアしてたTumblrの記事がよかった。
ここに書いておこう。

光市母子殺害事件で妻と子供を失った本村洋さんが一時の気の迷いから勤務先の新日鐵を退社しようと思い立ち辞表を書いた時に上司は次のように述べたという。
『君はこの職場にいる限り私の部下だ。そのあいだ、私は君を守ることができる。裁判はいつかは終わる。一生かかるわけじゃない。その先をどうやって生きていくんだ。君が辞めた瞬間から私は君を守れなくなる。新日鐵という会社には君を置いておくだけのキャパシティはある。勤務地も色々ある。亡くなった奥さんも、ご両親も、君が仕事を続けながら裁判を見守ってゆくことを望んでおられるじゃないのか』
また、次のようにも述べた。
『この職場で働くのが嫌なら辞めてもよい。君は特別な体験をした。社会に対して訴えたいこともあるだろう。でも、君は社会人として発言していってくれ。労働も納税もしない人間が社会に訴えても、それはただの負け犬の遠吠えだ。君は社会人になりなさい』
【なぜ君は絶望と闘えたのか?本村洋の3300日 門田隆将著】

昔はなぜかあまりこの人のことが好きでなかった。なんでだったかもう忘れたけど、多分、その激しさにどこか危なっかしさを感じたのかもしれない。でも今、この人に成熟を感じる。とてつもないものを乗り越えてきた、そんな気がする。