裸者と裸者/打海文三

上下巻をようやく読了。まずは一番好きな女性登場人物の一節から。

竹内里里菜の魅力の基本にあるのは活力だった。それが彼女の若々しさを人に強く印象付けている。一方で、人間が苦悩する現場に立会い、他者とともに煩悶するという体験を重ねることで獲得された彼女の芯の強さは、ちょっとした表情、仕草、言葉の端々にもはっきりと現れており、それが実年齢以上の風格を彼女に与えている。

これって、オレの大好きな女性と一緒だわw。

戦争という名の大虐殺と言う大罪に参加する正当な理由、その手を血で染める正しい理由なんてあるんだろうか。際限なく続くその戦争状態自体を終わらせるため。ただその為に瞬間訪れる大殺戮。その中で死ぬものにとっては、その前の死となんら変わりはない。死ぬことに違いはない。死に意味を与えるのは生だけなのだ。生き残ったものだけが、自分たちが生き残った理由としての死に意味を与えようとするだけなのかもしれない。

で、下巻の扉裏のこの一節。しびれるねぇ。

お前が罪を犯すならわたしも罪を犯そう
〜パンプキン・ガールズのテーゼ

そして、戦争のビジネスとしての一面も。
戦争とは、瞬間の憎しみと怒りを燃料とする永久機関であり、人命と巨額のお金を交換するビジネスモデルであり、そのシステムは強固で終わらない。

下巻の主人公月田姉妹の行動原理が良く現れている一節。

会ったばかりの人間を信用して命を張る。その決断だけが価値あるものだ。…決断したとたんに命を落とすことになるとしても、決断を積み重ねていく先に待っているのが世界のさらなる荒廃だとしても、この瞬間を生きる原理としては有効かもしれない。

下巻は、総体的に、女性中心で描かれている。

親のない子、ゲイをはじめとする性的マイノリティ、外国人、そして最大にして最強のマイノリティ、「女」。それら被差別者を差別し搾取する勢力を「男たち」と呼ぶのだろう。

裸者と裸者〈上〉孤児部隊の世界永久戦争

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裸者と裸者〈下〉邪悪な許しがたい異端の

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